お金・やりがい・時間どれを取るべきかということについてビジネスを軸に話すとまずはお金を取るべきです。
多くの人は困窮すると心も貧しくなります。また時間は後から付いてくるものです、最初から自由になんてなれません。
以下は金持ち父さん・貧乏父さんという本で解説されているお金の稼ぎ方の種類で見たことがあることも多いと思います。
最初はアルバイトやサラリーマンとして労働収入を得て、自営に移行、人を雇ってビジネスオーナーになり、お金を使って投資をしていく投資家になることで効率よくお金を増やすことが出来るということを説明している図です。
もちろん従業員の段階を飛ばしていきなりビジネスオーナーになる方もいますしいきなり投資家になる方もいます。
しかしお金が少ないうちから投資家になった所で投資には元手がいるので効率が悪すぎます。
そのため一部の天才的なトレーダーを除いてほとんどはサラリーマン時代に貯めたお金を元手にするかビジネスオーナーとして稼いだお金を元手にして投資を行なって資産を増やします。
投資家より稼いでいるビジネスオーナーも数え切れない位いますが時間効率だけを考えた場合はやはり投資家に分があると思います。税制の上でも投資家は優遇されています。
私はビジネスオーナーとして物販ビジネスを行い投資家として個人で株やベンチャー企業に投資を行なっています。
学生時代は普通にアルバイトをしていました。
物販ビジネスで最初に選んだ商材はイタリアアパレルで自分なりにやりがいがあるものではありましたが利益率(お金)を重視したものでした。
この辺りはホリエモン(敬称略)がやりたいことはお金を稼いでからやればいい、と当時言っているのを聞いて自分の中で腑に落ちたためまずはお金を稼ごうと決めたためです。
本当は全く興味が持てないものでも利益が出るものなら扱うというスタイルを徹底できる投資家のようなスタイルの人の方が効率よくお金を増やすことができると思いますがそこまでは割り切れませんでした。
当時は私も意識できませんでしたが初心者の人が見逃しがちなのが回収までの期間(キャッシュフロー)です。
例えば利益率60%と聞くと非常に魅力的な商材に思えますが30個売れるまでに半年かかるような商品であれば魅力は半減どころか1/10位になりますし単価が1000円であればさらに魅力が半減します。
初心者の頃は利益率だけを重視してしまいがちです一番大切なのはキャッシュフローです。
キャッシュフローを意識できず現金が手元にないと黒字倒産をしてしまうこともあります。
販売価格が5000円で利益率が50%で月に40個売れるような商品A、同じく販売価格が5000円で利益率が10%程度でも月に1000個売れるような商品Bがあったとします。
商品Aの利益は5000×50%×40=10万円
商品Bの利益も5000×10%×1000=10万円
と1ヶ月の利益は同じで利益率が高いAの商品の方が一見魅力的に見えますが最低仕入数が200個だとすると商品Aはとたんにキャッシュフローが悪い商品になってしまいます。
商品Aは利益率が50%なので単純に仕入れ原価を50%とすると200個仕入れると初期費用で5000×50%×200=50万かかります。
このうち1ヶ月で回収できる売上は20万円で残りの30万円に関してはすぐに回収はできません。
それに対して商品Bはすぐに売上を回収できるどころか仕入れ量を誤れば在庫が不足してしまい機会損失になるような商材です。
そのためこのケースでは商品Bの方が価値が高いのです。
ちなみに物販では長くても6ヶ月で在庫が捌けるように仕入れ量を調整すべきで商品Aも全然悪い商品ではないどころかいい商品です。あくまで比較した場合に商品Bの方が優れているという判断です。
なおこの時点で商材にやりがいがあるかどうかは一旦置いておきましょう。
売上(お金)を稼ぐ商品とやりがいがある商品は別です。
その中間に位置する売上を稼ぎつつやりがいがある商品というのを私も長年求め続けていますがそのような商材は数年に一度しか出会うことが出来ません。
今は見つけることが出来たのでいいですがやりがいの面で一生それを売り続けてもいいと思える商材に出会えたのは物販を始めてから5年程度経った時です。
最初からやりがいを求めていたら経営を続けることは出来なかったでしょう。
大抵のことはやりがいは後からついてくるので1つの商材・サービスでお金もやりがいも最初から求めるのではなく最初はお金を重視しましょう。
やりがいを求める人が多いのが日本人があまりビジネスが好きでない理由と重なってくるのだと思います。
私自身もやりがいを重視するタイプですがお金を稼ぐための商材と本当にやりたいことは分けています。
そして今ではお金を稼ぐための商材の販売にもやりがいを感じています。
最終的に重視すべきなのは?
では最終的に重視すべきなのは何かと言うと圧倒的に時間でしょう。
時間は誰しもに平等に1日24時間という時間が与えられていますがそこから睡眠時間や食事の時間などを引くと自由な時間というのは案外限られています。
22歳で大学を卒業してから80歳になるまでの58年間で、トータルで508,080時間です。
睡眠時間と労働時間を引いた自由な時間は約29.4年、約257,544時間と言われています。
このうち仕事に使う時間は84,280時間で16.5%ですが若い時間の方がやはり希少だと考えると単純にこのように計算することは出来ません。上記の自由な時間の計算は65才以降は定年を迎えて働かないものとして計算された数字です。
22-65才までの労働人生で考えると自由な時間は14.4年、126,144時間です。
ここからさらに食事や入浴などの時間が引かれます。
お子さんがいる場合は育児などでも時間は引かれていきます。
男性と女性で異なると思いますが仕事メインの男性が家事1時間、食事やトイレ、歯磨き、身だしなみの整えなどの雑事で1日3時間使うとして62780時間なので真に自由な時間は126144-62780=63,364時間です。
22-65歳の間は仕事をしている時間の方が長いことになります。
ビジネスオーナーや投資家になれば労働時間はおよそ1/4程度までは減らすことが出来ます。自由な時間を63,210時間増やせることになります。
人生における自由な時間がほぼ倍になると考えるとその差は恐ろしいですね。
もちろん労働時間を減らした上で趣味に時間を使おうがやりがいのある仕事に時間を使おうが家族との団欒に時間を使おうがその辺は自由です。
仕事が楽しければ無理に自由な時間を増やす必要もないですし私も自由な時間を増やした上で結局働いています。
ちなみに人生の時間を増やそうと短時間睡眠にチャレンジしたことがある方も多いと思いますがロングスリーパーかショートスリーパーかは遺伝子によって決まっているので後から変えることは難しいです。
自分が興味ないものの利益が出る商品と自分が興味があるものの利益が出ない商品であれば最初は自分が興味がなくても利益が出る商品を売るべきなのです。
たまたま自分が好きなものと利益が出るものが一致して好きなものを売って稼げる場合もありますがレアなケースです。
お金・やりがい・時間の観点からの商材選び
以下のような4種類の商材を用意してみました。
売上が増えるほど多少ではありますが作業時間が増えるので調整しています。
商材 | 販売単価(円) | 販売数(個/月) | 売上(万円) | 利益率(%) | 利益(万円) | 作業時間(h) | 時給換算(円/h) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A | 1000 | 1000 | 100 | 10 | 10 | 25 | 4000 |
B | 3000 | 300 | 90 | 20 | 18 | 20 | 9000 |
C | 5000 | 100 | 50 | 30 | 15 | 15 | 10000 |
D | 10000 | 10 | 10 | 50 | 5 | 10 | 5000 |
この時時給換算で一番報酬が高いCの商品を人は選びがちです。私も昔はそうでした。
しかしここに大きな落とし穴があります。
使える資金には限りがあるということです。
現在価格が5000万円で色々な条件から1年で絶対に7000万円に値上がりすることが分かっている不動産があったとしてあなたは購入しますか?
という質問をしても買うことが出来る人はそもそもその不動産を買うことの出来る資金を持っている人だけです。
自己資金で全てをまかなう必要はなくほとんどの場合借り入れを行なってその物件を買うことになりますが借り入れを行うにも金融機関からの「信用」が必要でそれにも限度があります。
物販でも同じことが言えます。
使える資金には限りがあります。
だからこそ融資を受けて購買金額を上げていくわけですがそれを理解できていない方は驚くほど多いです。もちろん私も物販ビジネスを始めた頃は理解していなかったので偉そうなことを言うつもりはありません。
副業で物販をやってみたい、在宅で物販をやってみたいという人は増えていますがこの物販特有のビジネス感覚を持たずに成功出来ていない人が多く成功する人が増えて欲しいため厳しく言っています。
改めて融資可能額を足した表を見てください。
商材 | 販売単価(円) | 販売数(個/月) | 売上(円) | 利益率(%) | 利益(万円) | 融資可能額(万円) | 作業時間(h) | 時給換算(円/h) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A | 1000 | 1000 | 100 | 10 | 10 | 300~500 | 25 | 4000 |
B | 3000 | 300 | 90 | 20 | 18 | 270~450 | 20 | 9000 |
C | 5000 | 100 | 50 | 30 | 15 | 150~250 | 15 | 10000 |
D | 10000 | 10 | 10 | 50 | 5 | 30~50 | 10 | 5000 |
借入金月商倍率基準というものがあり
(短期借入金+長期借入金+割引手形)÷月平均売上高
で計算されます。
小売業・製造業 (1.5以下(限度額以内) / 3.0 (要注意) / 6.0以上 (限度額超過))
ですが自社の経験上、また色々な会社のBSを見てきて思うのは長期借入金(返済まで5年以上など)の場合は上記の水準は全く当てになりません。
上記の式は主に短期借入金の場合に参考にすべき計算式です。
銀行の融資・ファクタリング担当の人に聞いたことがあるのですが
銀行は
債務償還年数(年) = 借入金 ÷(税引後利益 + 減価償却費)
というあまり馴染みのないであろう指標を使っているとのことでした。
目安は10年以下。
3000万円借り入れに対して税引後利益 + 減価償却費を合わせたものが300万円以上であれば適切と言うことになります。
借入金月商倍率基準だと3から要注意になっていますがほとんどの物販系の会社は3を超えているのでネットでだけ情報を拾っていると自分の会社はほとんど借りることが出来ないな、と判断してしまいがちです。
小売業と一口にまとめてもそれは昔から存在する実店舗の小売業も含まれていてEC系セラーの実態を反映した数字となっていません。
私は月商の3~5倍程度の借り入れまでするべきだと考えています。というより低い金利で借りることが出来るのであれば借りることが出来るだけ借りた方がいいです。必要なければ借りても使わなければいいだけです。
よく言うように銀行は晴れの日に傘をさして雨の日に傘を取り上げると言うように本当に経営が苦しい時には貸してくれません。
そのため表でも借入金額は月商の3~5倍で計算しています。ちなみに売上だけでなく社長の資質や事業計画書も見られるのでもっと借りることができる人もいれば反対に売上があってもあまり借りることができない場合もあるので悪しからず。
融資を受ければそのお金を使って売上をさらに増やすことができるので借り入れ額をさらに増やすことが出来るようになります。
大体借り入れ累計1億円超えが物販セラーとして上級者の仲間入りを果たす基準だと思います。
ただし他の事業をやっていて収益性が十分あるので借り入れはあまり行わないという会社もいますし今回の話はあくまで物販メインの会社の話になります。
借り入れなしの単体で見た場合商材Cが一番魅力的なのですが商材B次点で商材Aの方が物販ビジネス的には美味しい商品となるのです。
融資を受けることができれば作業時間として算出している部分も人を雇ったりツールの導入・外注化をして自分の作業時間を減らすことが出来るのでその面でも商材Aや商材Bの方が商材Cより投資価値が高くなってきます。
この場合私だったらバランスがいい商材Bを選びますし今はもう売上を増やす必要がないのでやりがいを感じて扱いたいと思ったら商材Cや商材Dを扱うでしょう。
ビジネスのステージにおいて重視すべきものは変わります。
まずはお金を重視した方がトータルで幸せになりやすいという一般論を話しているだけなのでそうはいっても最初からやりがいの方が大切だとこだわるももちろん自由です。
ここまでやりがいの話は一旦無視してきましたがいい商品やサービスを作るのには研究開発費と言う名のお金がかかります。
やりがいを重視して商品にこだわって莫大な時間をかけたものの広告費やマーケティング費用に回せず1商品の月商数十万円程度で終わるという事例を本当に腐る程見てきています。
それはやりがいという名の見栄えの良さを盾に使ったただの自己満足です。
完璧主義だと失敗します。
自己満足が目的であれば最初からやりがいにこだわってもいいですが正しいルートはお金→時間→やりがいだと私は考えています。
ただ誤解しないでいただきたいのはお金の面を無視して本当にやりがいだけを追求した職人・クリエイターが作るものは素晴らしいものばかりです。お金なんて全く興味ないという人は逆にそうした道を追求して素晴らしいものを世に残していただきたいと思いますし各々が最初からやりがいを感じる事だけを目指しても成立する社会が望ましいのは言うまでもありません。
少なくとも物販ビジネスに関してはまずはお金を増やすことを意識しましょう。
この生地もっと滑らかにしたい、縫製を綺麗にしたいから日本で作りたい、裏地に希少なコットンを使いたい・・
やりがいを求めてそういったこだわりを持つこと自体は悪いことではありません。
しかしこだわればこだわるほどそれは販売価格に乗せざるを得なくなり結果としてボリューム層を逃して売上は伸びず、借り入れも出来ず開発資金は底を突くという自体を招きかねません。
富裕層向けにこだわった商品を作っているハイブランドも多くの場合はまず売上を伸ばすことによって資金を稼ぎそれによってこだわりを強くして販売価格を上げることに成功しているだけでいきなり全てにこだわることが出来ているわけではありません。
この辺りはルイヴィトンの価格改定の歴史などを調べると勉強になって面白いと思います。為替の影響を取り除いても徐々に値上げしています。
これをきっかけに物販ビジネスに対する意識が変わる方が増えたら嬉しいです。