本記事では、日本のメーカーと海外販売権について交渉するための具体的な手順やポイントを詳しく解説します。
メーカーと良好な関係を築き、販売権を獲得するためには、事前準備をしっかり行い、相手の立場に立った交渉を心がけることが重要です。
まず最初に以下のものを事前準備する必要があります。
交渉前に準備しておきたいもの
- 対象とする海外市場の市場調査データ
- 想定される販売数量と売上予測
- 海外での販売実績(もしあれば)
- 販売戦略案(価格、プロモーション方法など)
- 物流体制の整備状況
- 現地法規制への対応計画
その上で交渉時に確認しておきたい項目を以下にまとめました。
交渉時の主要な確認事項
販売権の範囲
- 独占販売権か非独占か
- 対象地域(国や地域の範囲)
- 対象製品の範囲
- 契約期間
取引条件
- 仕切価格(輸出価格)
- 最低販売価格(もしあれば)
- 最低発注量
- 支払条件
- 物流条件(インコタームズ)
サポート内容
- 商品情報の提供(多言語対応)
- マーケティング素材の提供
- 技術サポート
- 品質保証の範囲
- 不良品対応の方法
製品関連
- 現地規制対応の必要性
- パッケージの言語対応
- 説明書の翻訳
- 製品保証の範囲
これは最初のメールでいきなり送るわけではありませんが事前に詰めておくことが大切なのでメーカー毎にスプレッドシートなどでチェック項目を用意するなどして管理するようにしましょう。
アプローチ方法
- 担当営業に相談か問い合わせフォームからメール
- 具体的な販売計画を提示
- 段階的な展開を提案(テスト販売から開始など)
- 定期的な実績報告の仕組みを提案
いきなり海外で売りたいというメールを送る人がいますが一定以上の規模のメーカーを相手にした場合は相手にされません。それもそのはず、相手からしたら日本の企業ではなく海外の現地の企業に代理店になってもらった方が現地のトラブル対応や販促を進めてもらえそうと考えるため、通常よりハードルが高くなっています。
そのためあえて輸出の場合はあえて海外法人を用意するのが効果的だったりします。(日本法人で取れるケースも数多くあるので一概には言えません)
交渉を有利に進めるポイント
- 自社の強み(販売力、マーケティング力など)を具体的に示す
- 現地市場に関する深い理解を示す
- メーカーのブランド価値を守る方針を示す
- 長期的なパートナーシップを意識した提案をする
以下のようなメーカー側の懸念事項への対応も重要です。
- ブランドイメージの維持
- 並行輸入品との競合
- 現地での価格管理
- アフターサービス体制
- 知的財産権の保護
これらの点について、具体的な対応策を準備しておくことで、交渉を円滑に進めることができます。
輸出メーカー仕入れの販路
輸出のメーカー仕入れの販路がAmazonだけだと非常に弱いです。
今時Amazon(特にアメリカ)で出品するくらい誰でも出来ます。これがヨーロッパやその他の地域になると税制などの問題も複雑になってくるのでメーカー側から見ても任せる意味は出てきます。
自分が相手メーカーの商品を扱いたい、という気持ちが先行していては交渉はうまく決まりません。相手が困っていることを解決する、それによって利益を出す。これが商売の基本原則です。その意味で言うとそもそもネット販売自体疎くて国内のAmazon販売はもちろん海外のAmazon販売なんてさっぱりという企業もいるのでそういった企業には海外Amazonで販売するというシンプルなアプローチでも刺さるでしょう。
本質は相手が困っていることは何か、と言う所でそれは会社によって異なります。
Amazon以外では以下の販路で販売していることが武器になった経験があるので共有しておきます。
- Walmart
- Lazada
- Shopify
- 現地のスーパーマーケット
- 現地の展示会
あとはすでに書いていますが意外とヨーロッパAmazonでの販売やオーストアリアAmazonでの販売はアピールポイントになります。これはAmazonがどうと言うより、ヨーロッパやオーストラリアでのブランド認知を広げられる、と言うのが大きいのでしょう。同じ理由から東南アジア方面で強いLazadaでの販売が交渉の武器になったこともあります。
アメリカのAmazonだけで交渉成功率がイマイチの方は他の国でも販売してアピールポイントにしてみてはいかがでしょうか。
輸出と卸仕入れ、並行輸入品の扱いについて
なお輸出の場合卸仕入れであればメーカー仕入れより遥かに簡単です。ただし卸仕入れの場合は海外への輸出は並行輸入品扱いになるかそもそも代理店によって禁止されている場合もあります。実態としては国内で売りつつ横流しして輸出しているセラーも非常に多いです。
この件に関して国際弁護士に確認したことがありますが日本のメーカーが海外の代理店に独占販売権を与えている場合、その契約に基づいて輸出が制限されることがあります。ただし、その契約はメーカーと代理店間のものであり、第三者が販売すること自体を直接違法とするわけではありません、とのことでした。
似たケースでメーカーや代理店が一定の価格以下で販売しないように規制をかけることがありますが独占禁止法により、メーカーが小売業者に最低販売価格を強制することは違法とされる場合があります。ただし、推奨販売価格(あくまで参考価格)を示すことは可能です。「この価格以下では売らないでほしい」と求めることは違法ではありませんが、従わない場合に取引停止やペナルティを課すと独禁法違反になる可能性があり形骸化しており実際には守っていない人も多いです。
またAmazonは1つの販売ページに複数のセラーが出品できる特殊な形態なので並行輸入品の場合は別ページに出品しなくては行けませんがその他のモールはそもそも販売ページに他のセラーが出品してくることはありません。そのためページ内に並行輸入品であることを記載しておけば多くの場合大丈夫です。
国内で言えば楽天、Yahooショッピングなどは並行購入品の販売が可能ですしAmazonも正規品のページに重ねて出品しなければ販売可能です。海外のマーケットでも同様に並行輸入であることを記載すればほとんどのマーケットで販売可能です。年々ルールも変わっていくと思うので心配であれば各モールに問い合わせてから販売するようにしてください。
唯一例外的にEU加盟国はEU国内の企業の権利を守るために並行輸入品に対してもとても厳しいので輸出を行うとしたらメーカー仕入れでないと成立しません。
この記事が輸出のメーカー仕入れや卸仕入れを行いたい人の役に立てば幸いです。