一般的に個人+法人で残る金額のことだけを考えるとまずは生活に必要な必要最低限の役員報酬を設定し、その後法人の利益を800万円までは確保、それを超えるレベルになったら役員報酬を1000万円程度にするのがベストと言われています。
しかし別途経費が使えるとはいえ都内であれば1000万円程度では贅沢も出来ないので1000万円を超えて役員報酬を設定する方も大勢います。(事業に関係ないものは経費で落とせないため)
私もしばらくの間は役員報酬を1500~2000万円に設定していました。
しかし近年は必要最低限の年間300万円程度まで下げています。
それは一体なぜでしょう?
計算された物販の出口戦略
実は個人で給与所得としてお金をもらっても中々資産は増えません。
累進課税制度により所得税は最大45%、住民税が10%の合計55%がかかるからです。控除分があるとはいえ2000万円を超える分は半分以上持っていかれると思ってください。
ここで日本に住んでいるからには日本に税金をたくさん納めるべきだという考えがあります。
一理あります。当然脱税まがいの節税をしている人はそのような意見によって否定されるべきだと私も思います。
日本という土壌でビジネスをしている限り法人で利益を出して日本に税金を納めるべきだというのは私も同意です。しかしこれを無理に役員報酬という形で個人に払おうとすると無駄な税金を払ってしまうことになります。
結果として個人の資産構築は難しくなります。
私は法人では利益を出しどんどん税金を払うべきだと思いますが個人で無駄に税金を払うべきだとは決して思いません。
税金を払うべきだという人も誰しも30%で済むところを40%、40%で済むところを50%払いたいという人はいないでしょう。
そこでこのブログでは何度か解説していますが個人で億単位のお金を受け取ってそれを合法的に税率20%(正確には20.315%)にする方法があります。
それが法人(株式)の売却です。
退職金でも節税できますが退職金の税率は勤続年数によって変わりますし老後のお金よりも数年以内に大金を手にしたいという方の方が多いと思います。
個人に残るお金のシミュレーション
まず会社の営業利益(税引き前の利益)が2000万円出ているとします。
その場合全額を役員報酬として支払うと法人税は0円、個人の所得税+住民税は600万円程度です。社会保険料も引くと残るのは約1200万円程度です。
もう一方を役員報酬を300万円とします。法人税は500万円で法人に残るお金は1200万円程度、個人の所得税+住民税+社会保険料は70万円で個人に残るお金は約230万円です。
これだけだとあまり得している感じはしないと思います。
しかしきちんとビジネスモデルを構築していればEBITDAの5年分+純資産で法人は売却可能です。
EBITDAとは営業利益+減価償却資産
のことです。物販では棚卸資産は多いですが減価償却資産はそれほど多くならないので一旦無視して0とします。
そのため先ほどの会社だと1700-500=1200万円の内部留保があるので
1700×5+1200=9700万円
が売却予想額となります。
ここから20%の税金を差し引いた金額と役員報酬の税引後の金額を合わせると約8000万円となります。
ただし5倍は私や私のコンサルティングを受けた人が売却しているEV/EBITDAの比率で7倍で売ったこともありますし、ビジネスモデルによっては10倍以上で評価されるものもあります。
しかし他の物販セラーに聞くと3倍程度でしか売却できていない人も多いです。
決算書の数字の残し方も違いますが仮に同じでもビジネスモデルや投資家への説明でも変わってきます。
もちろん事業を続ければその後も利益は入るのでこの金額を一概に比較するのはフェアではないですが売却したお金で再び事業を始める方が効率的です。
また法人税をいっぱい払った方にはさらにメリットがあって仮にここで売却しないとしても銀行の評価は最大限に高まっているので融資を受けてレバレッジを効かすことが出来ます。余計な税金を払いたくないからと赤字決算にしていると銀行から融資を受けることも出来ません。
そのため本当は
創業融資を受ける→黒字を出す→さらに追加で融資を受ける→売却向けの数字を作り売却
という流れが一番理想的です。
さらにこれは世間の批判を買いそうですが役員報酬が低いと法人売却をした次の年以外は年収制限に引っかからないので子供手当などの補助金を受けることも可能です。法人売却こそ現代の錬金術であり社会が資本主義を軸にしている限り、格差がこのようにして広がっていくのはもはや止めることが出来ません。
実際1億円の壁というものが存在して所得で1億円を超える人は法人売却を含む株式の売却による収益が多いためそれ以下の人より税率が少なくなっています。
この問題はさておき売却額1億円と聞くと別世界のように感じてしまう人も多いですが営業利益で2000万円でいいと聞くとハードルが下がった気がしませんか?
上場企業で平均給与が一番高い会社にM&Aキャピタルパートナーズという会社がありますがやはりそれだけM&Aは動くお金が大きいということです。そこから運用するとしても生涯賃金としては心許ないので可能なら1社売ったお金で再度事業を行い2社目の売却額で数億円稼ぐか、1社目を融資をフル活用して数年かけて企業価値数億円まで育てて売りましょう。
どちらにせよレバレッジは必要です。前者が売却によるレバレッジ、後者は融資によるレバレッジの後の売却によるレバレッジを使っています。
なおたまに法人の売却ではなく事業売却をしてしまう人もいますが通常の法人税がかかるので勿体無いのでやめましょう。
売却の場合は1億円貯めるのは比較的簡単ですが高い役員報酬を受け取るやり方を選択した場合生活費もかかるので1億円貯めるのに最低でも10年はかかります。その仕事自体が生きがいなのであれば売却を目指す必要はありませんが資産形成の手段として行なっているのであれば必ず売却に向けた数字作りをしましょう。
何度も言いますがただ稼いでいるだけではダメで、投資家が企業を買いたくなる形で数字を残していく必要があります。
物販の役員報酬はいくらにすべきか
資産形成を目的とするなら必要最低限の金額にしましょう。会社を長く続ける場合は法人と個人で残る金額を考えると1000万円程度、売却をせずにやや税金の払い損でも個人の資産を増やしていきたいのであれば2000万円程度が限度です。
ちなみに売却時には同業他種での事業は禁止されることが多いですが物販の別ジャンルで新たに起業することは問題にならないことがほとんど(買主に要確認)なので売却後も再び起業する人が多いです。
ただ体力的には疲れるので私は売却は次でなるべく最後にして最終的には名刺代わりの会社だけ残そうと思っています。その時の役員報酬は300~1000万円程度にするでしょう。
多くの人はきっかけはどうあれお金を稼ぐために物販ビジネスに取り組んでいるはずです。しかしほとんどの人が最短ルートを知らないあまり遠回りをしています。
周りには同世代で数十億円規模の資産を築いている人もいますが皆法人売却で成り上がっています。今の日本の税制で一代で財を築くには余程特殊な才能に恵まれた人以外は事業売却以外考えられません。
事業も別に上場する訳ではありません。上場は私も経験していないので偉そうに語れませんが友人に2名経験者がいてどちらも時代の流れ、運が良かったと言っています。
それに対して数億円程度の事業売却であれば再現性があり努力で十分目指せるラインです。
もちろん役員報酬300万円コースは徹底的に合理化した例なのでもう少し高い600万円程度でも全く問題ありませんが2000万円以上にして散財してしまうのだけは避けましょう。
最初に事業売却という道を意識するかどうかで今後の人生は大きく変わってきます。また直近で売却する気がない人でもいつか人生には終わりが来てそれよりも前に仕事を辞める時が来ます。結局いつかは売却するべきタイミングが来るので覚えておいた方がいいです。
後継者不足で会社を思っても売却に向けた仕組みづくり・数字づくりが出来ていなければ買い手が付きません。ぜひ人生の選択肢を広げる上でも売却を意識した役員報酬を行うようにしましょう。