この記事では国際商標登録の流れや費用について解説しています。
日本で商標を取得したことがある方は多いと思いますが商標は属地主義となっているためその国々の決まりに従うことが原則であり、商標権の効力はその国に限られます。そのため日本で商標を登録した場合はその効力は日本国内に限られれるため、アメリカや中国など他の国で商標の効果を発揮するには改めて商標登録の手続きをする必要があります。
目次
国際商標登録の方法と種類
国際商標登録の方法として3つの選択肢が考えられます。
- 個別出願
- マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコル)
- 欧州連合商標(EUTM)
の3つです。
それぞれの方法の流れについて見て行きたいと思います。
個別出願
商標を登録するため、商標登録が必要なそれぞれの国へ出願して審査を受けることを個別出願といいます。
例えば日本とアメリカ、カナダで販売を行いたいとしてそれぞれの国に個別で商標登録を出願する場合は個別出願をしていることになりますが個別出願は各国の異なる言語や決まりに応じて申請が必要なため、手続きが煩雑になる傾向にあります。
日本の商標登録を行うという行為も国際商標登録の観点から見ると個別出願を行なっていることになります。
また商標は弁理士などに任せずに自分で行うことも出来ますが海外の場合は難度が上がる為現地のエージェントに任せることになるでしょう。
そのため商標登録を行う必要がある国が多い際に個別出願を行うと費用がかさむのが難点です。
マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコル)
国際商標の登録制度は、マドリッドプロトコルと呼ばれる「マドリッド協定議定書」に基づき、WIPO国際事務局により管理されています。
国際商標登録とは、この国際事務局の登録簿に記載されたことを指しており100カ国以上が対象国となっています。
マドリッドプロトコルに基づく国際商標登録の費用は
基本手数料(653スイスフラン)と、商標の種類、保護を求める国及び商品・役務の区分の数によって追加の手数料がかかります。
追加の手数料は
- 基本手数料
- 各締約国の指定についての付加手数料
- 商品及び役務の区分の数が3を超える場合における1区分ごとの追加手数料
となっています。
例えば、インドとEUの両地域で2018年2月16日に商標を登録する場合、商標が白黒で、商品・役務が1区分であれば、合計金額は1,698 スイスフラン [653基本手数料+ 148 (インドで1区分) + 897 (ヨーロッパで1区分)]となります。
追加の手数料は、国際登録された商標の保護を求める国の追加、更新などにも適用されます。
国際商標登録されている商標はマドリッドモニターというWIPOのサービスで確認することが出来ます。
国際商標登録の条件
- 日本国内での出願・登録
- 同じ商標(マーク)であること
- 指定商品・役務(サービス)が同一、もしくはその範囲内であること
- 同じ出願人(名義人)であること
国際商標登録を行いたい商標が、すでに日本国内で出願されているか(基礎出願されているか)、登録されている(基礎登録されている)ものでなければなりません。
また国際商標登録を行いたい商標が日本で基礎出願・基礎登録を行なっているものと同じものである必要があります。
ただし基礎出願・基礎登録と同じでなくてもその範囲内の指定商品・役務であればマドリッドプロトコルで出願可能です。
また名義人は日本で出願した時と同じものである必要があります。
マドリッドプロトコルで登録した国際商標は、登録日から10年間に渡って有効で直接WIPO国際事務局へ手続きすることになります。
こちらは私は経験したことがありませんが日本の商標登録の更新は非常に簡単であった為国際商標登録も登録は難しくても更新は簡単だと思われます。
国際商標登録の流れ
- 日本で商標出願
- 特許庁に願書出願
- WIPO国際事務局で方式審査
- 審査に通ると国際商標登録証が郵送される
- 各指定国官庁による実体審査
- 各指定国での商標登録
- 各指定国で登録完了通知(商標登録証が発行される場合あり)
となります。
欧州連合商標(EUTM)
あまり活用することはないかもしれませんが欧州圏で商標登録する際には、登録を行うことでEU加盟国全域で保護できる欧州連合商標(EUTM)を使う方法もあります。
EUTMはスペインのアリカンテに本拠地を持つ欧州連合知的財産庁EUIPO)によって管理されています。
出願対象となるのは以下に住所のある人や法人(営業所含む)となっています。
- EU加盟国
- パリ条約加盟国
- TRIPs協定締約国
そのため日本在住で日本で企業を運営している場合はそもそも活用することが不可能な制度となっています。
加盟国4カ国以上で出願する場合、その費用は各国出願よりもEUTMの方が廉価となります。
またすでに紹介済みのマドリッドプロトコルは最大の弱点としてセントラルアタック(基礎終了による国際登録の取消し)が起こるデメリットを持っています。国際登録日から5年間は本国の基礎登録に基づくため、基礎登録が取り消された場合には国際登録および全ての事後指定国における効力を失ってしまいます。
その点から欧州をメインに商品を販売するEUTMを活用するケースが多くなっています。
国際商標登録に強い事務所
- プライムワークス
- ファーイースト国際特許事務所
個人で行うことも出来ますが商標登録が拒絶された際の反論などは手間がかかるものです。
ちなみに私は国内の商標登録をする時は個人でやっていますが国際商標登録は事務所に依頼しました。かかった費用は6ヶ国で50万円ほどです。
個人の弁理士に任せると自分で行う場合と事務所に任せる場合の中間くらいの費用で出来ると思いますがこういう時事例が多い所に任せたほうがいいのではケチらずに事務所に任せたほうがいいと思います。
国際商標登録の流れや費用についてまとめ
- 出願国が少ない場合は個別出願
- 販売がEUメインならEUTM
- それ以外ならマドリッドプロトコル
商標はECサイトでの販売や広告による販促の際に自社のブランドを守ってくれる大切な仕組みなのでぜひ活用していきましょう。